| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-092 (Poster presentation)
ササ類の多くは一回繁殖型であり、長期間の栄養成長期を経て大規模な一斉開花を行うことが知られている。ササ類の開花・結実は稀なため、種子の発芽特性に関する知見はいまだ限られている。スズタケ(Sasamorpha borealis)は北海道から九州、朝鮮半島に広く分布し、冷温帯から暖温帯の林床を優占する主要な種である。2016年、2017年の春に長野県や岐阜県、愛知県において大規模な一斉開花がみられた。本研究ではこの開花で得られた5系統の種子をシャーレに播種し、発芽特性を調べた。培地は1%寒天を用い、発根をもって発芽と判断した。イネ科草本で一般的に行われている発芽処理として、低温湿層処理(2℃1ヶ月)、高熱処理(50℃5日間)、ジベレリン処理を施し3週間育成したが(20℃/30℃変温)、いずれの処理でも発芽しなかった。TTC染色により未発芽種子の生存を確認したところ、胚は生存しており休眠状態にあると考えられた。そこで、オクヤマザサでの報告にならい、低温期(2℃)と高温期(20℃/30℃)を数回繰り替したところ、全ての系統で発芽がみられた。繰り返しの回数と処理期間に着目すると、発芽は繰り返しが3回以上、かつ低温期が16週以上および高温期が9週以上でみられ、休眠を打破し発芽できる状態になるまでに数回の変温and/or一定期間の低温もしくは高温期間が必要だと考えられた。また、発芽開始から高温期を維持すると1年にわたって発芽個体がみられた、発芽は長期にわたることがわかった。また、低温環境下で発芽した種子はわずかだったことから、一度スタンバイ状態になっても低温になると環境が改善するまで再度休眠状態を示すと考えられた。実験終了時の未発芽種子はわずかであり、発芽実験中に多くの種子が菌害で死亡したことから、埋土種子を形成するような長期的な種子休眠は稀だと考える。