| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-095 (Poster presentation)
現在、草原は過去に例が無いほど急速に減少しており、草原性希少植物の保護が急務である。広域における生物の分布把握に有効だと考えられているのがリモートセンシングであり、特にドローンは低高度からの撮影が容易で、好きな時期に飛行可能なため、サイズの小さく季節変化の大きい草原性植物の種・個体レベルでの判別に有利である。そこで本研究では、長野県・菅平高原のスキー場草原で、ドローン(Inspire2、DJI社)を用いて(1)希少植物の花の検出、(2)植物多様性の判別に取り組んだ。
花の検出のため、6地点の各面積3000~10000 m2で高度30 mから画像撮影を行なった。オミナエシ・カワラナデシコ・キキョウ・コウリンカ・マツムシソウ・ヤナギタンポポの6種を対象とし、色情報から花(個花または花序)を判別するアルゴリズム構築を行なった。カワラナデシコとマツムシソウについては1地点4×6 m区画で、画像から検出した花数と地上で調べた花数を比較し、検出精度を求めた。さらに調査地全体を8月~10月に約2週間間隔で定期撮影し、6種の開花フェノロジーを追跡すると共に、開花から結実までの日数を地上で調べた。そして両者を合わせて結実数の季節変化を推定し、各調査地における草刈時期の例を提案した。
植物多様性判別のため、14地点の1×20 m区画で高度10~50 mから動画を撮影した。画像間の正規圧縮距離のばらつきが、地上で調べた植物種数のばらつきと関係していることを確認した上で、より簡便な3つの画像指標(PNG圧縮困難度・JPEG圧縮困難度・スペクトル分散和)と植物種数との関係を検証した。その結果、3つの指標のいずれでも植物種数が多いほど指標の値が高くなり、さらに撮影を行なう季節と日照条件により、適切な画像指標が異なることが分かった。この手法を用いて、新たに5地点の各面積3000~8000 m2で多様性の推定を行なったところ、特に1地点で区域全体にわたり多様性が高いと推定された。