| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-100 (Poster presentation)
広域分布植物において島嶼環境は,本土集団と異なり,花粉や種子分散による遺伝子流動が限定的なため,種分化に影響を与える要因を解明し多様性を生み出す要因の解析を行う最適な調査地となっている。島嶼での形態分化を促す要因として訪花昆虫の行動やその組成の変化,それに伴う交配様式の変化が知られている。本研究では本土集団で主として夜行性の訪花昆虫を利用している広域分布種キキョウ科ツリガネニンジンについて,訪花昆虫相と開花習性に本土との距離の異なる海洋島と本土近接型離島で違いが見られるのかを明らかにした。調査は2017-2020年海洋島として伊豆諸島の2島(三宅島,伊豆大島),本土近接型離島として鳥羽諸島(神島)を設定し,昼夜のビデオ撮影と直接観察による訪花昆虫相とその行動解析を行った。また開花習性として開花開始時間の調査を行った。その結果,本土近接型離島である鳥羽諸島(神島)では本土での報告と同様,夜間の訪花昆虫を主として利用していることが明らかになった。一方,海洋島である伊豆諸島2島では昼間の訪花昆虫を利用していた。開花開始時間も,伊豆諸島では鳥羽諸島よりもより速く開花を開始することが明らかになった。本土近接型離島と比較し,海洋島である伊豆諸島では,訪花昆虫相のシフトとそれに対応した開花特性の分化が進化したものと考えられる。