| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-103 (Poster presentation)
温帯地域では樹木の展葉フェノロジーは個体の生産性に直結するため、展葉フェノロジーの種間差を明らかにすることは重要である。これまで様々なフェノロジー研究において、簡易的に調べることができる開芽(bud break, bud burst)や展葉開始(leaf out, leaf unfolding)に着目してフェノロジーの種間差と温暖化応答が調べられてきた。しかし、樹木の生産性への影響としては、開芽・展葉開始時期よりも葉の成熟時期の種間差のほうが重要である。本研究では、愛知県豊田市の暖温帯二次林の林床に共存する常緑広葉樹と落葉広葉樹の展葉フェノロジーを経時的に調べるとともに、定期的に葉を刈り取って葉の形質の季節変化パターンを調べることで、常緑樹と落葉樹の展葉過程を比較した。
この結果、開芽時期は落葉樹では3月下旬から4月上旬、常緑樹では4月上旬から5月中旬であり、展葉完了時期は落葉樹では4月下旬から5月上旬、常緑樹では5月中〜7月上旬だった。LMA(葉重/面積比)は展葉初期に減少し、その後やや増加して一定になる種が多く、落葉樹と常緑樹で成熟時のLMAには明瞭な差が見られたものの、季節変化パターンには一貫した差は見られなかった。窒素濃度は展葉初期に急激に減少し、定常に達する種が多く、初期の窒素濃度と減少速度は落葉樹のほうが常緑樹よりも大きい傾向が見られた。展葉時における葉の乾燥重量の増加速度は落葉樹より常緑樹のほうが大きかったのに対し、窒素量の増加速度には常緑樹と落葉樹で差は見られなかった。このような落葉樹と常緑樹での展葉パターンの差について考察する。