| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-105 (Poster presentation)
都市緑化は気象緩和などの効果があり,人々の暮らしを快適にしている.一方,都市部は樹木の生育にとって高温・水ストレス条件下であり、今後の気候変動によって益々顕著になると予想される.植物の光合成は高温により低下するが,種によっては高温耐性や高温順化を示すものもある.本研究では,緑化樹木を対象に樹種ごとの高温耐性及び高温順化とそれらに対する水分条件の影響を調査した.
茨城県つくば市内のガラス温室内を対照区,その温室内部に設置したビニール温室内を加温区とした.加温区の平均気温は対照区よりも約2℃高かった。各温度区で,異なる頻度で潅水を行う3つの潅水区を設置し,ハナミズキ,ヤマモモ,ケヤキの苗木を生育した.葉の高温耐性を評価するために,6~10月に葉の光量子収率(Qy)と葉温の関係を測定し, Qyの半減値における葉温(T50)を算出した.また,光合成への影響を調べるために,8月に最大光合成速度(Amax)と葉温の関係を測定した.さらに,10月に葉枚数と葉面積を測定した.
ハナミズキは加温区においてT50が高くなる高温順化がみられたが,Amaxは低下した.水ストレスが加わると高温順化は起こりにくく,Amaxがさらに低下したうえ,葉枚数が少なくなった.ヤマモモは他樹種よりT50が高かったことから高温耐性が高いと考えられ、高温順化もみられた.また,高温処理によって,Amaxを広い温度帯で維持する順化反応を示した.一方,水ストレスによりAmaxの最大値は上昇したものの,T50の上昇による高温順化の程度は小さくなった.また,葉面積が小さくなり,葉枚数は少なくなった.ケヤキは水分状態に関わらず,T50が高くなり,高温順化が起こった.以上より,高温順化の程度は樹種によって異なり,水ストレスは高温順化を制限することが示唆された.よって,都市緑地における温暖化対策を行うにあたり,高温耐性・順化能力の高い樹種の選定に加え,水分環境も考慮した複合的な適応策が望まれる.