| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-114 (Poster presentation)
野外で生育する樹木の形態形成や、根返り・幹折れなどの風害発生のメカニズムを解明するために、樹体に作用する風荷重の大きさを直接計測することは大変有意義であると考えられる。発表者らはこれまでの研究で、ひずみゲージを用いて立木に作用する荷重の大きさ・重心位置・方向が計測可能な手法を開発し、実験室内で既知荷重に対する測定精度を検証してきた。当手法によると、ひずみゲージの貼り付け精度や木の材質の不均一性などに関わらず高精度な推定が可能であり、分布荷重ならびに全方向からの荷重を数%程度の誤差で計測可能である。そこで、この手法を用いて、実際の野外の風による変動荷重のもと荷重計測を行い、その精度検証を行った。測定には樹高2mから3 m のスギ稚樹の地上部を用い、ひずみゲージを貼り付け、分力計の上に固定した。分力計は、上に載せた物体に作用した荷重及びモーメントを計測できる測定器であり、これを用いてひずみゲージによる荷重計測値の検証を行った。また、同時に超音波風速計による風速と風向の計測を行った。はじめに引張試験を行って、既知荷重に対する分力計およびひずみ計測の測定精度を検証したところ、いずれも5%前後の誤差で測定可能であり、分力計とひずみ計測の誤差は最大10%程度であった。実際の風による計測では、分力計とひずみ計測の誤差は荷重の大きさとで10 %前後、荷重方向で5度前後と、比較的高精度での計測が可能であることが確認できた。また、3秒平均風速に対して、ひずみ計測による荷重の大きさの計測値は2次関数によくフィットしており、ひずみ計測による荷重方向と風速計の風向もよく一致していた。これらのことから、ひずみゲージを用いた計測手法によって、実際の風による荷重も計測可能であるといえる。