| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-115 (Poster presentation)
常緑樹と落葉樹を一定の環境で生育させたときに葉寿命が異なるのかを検討するために、同じ人工気象室内で、コナラ属の常緑樹と落葉樹を栽培し、展葉と落葉の様子を調べた。常緑広葉樹アカガシ(Quercus acuta)、アラカシ(Q. glauca)、シラカシ(Q myrsinaefolia)の約0.3mの苗木、落葉広葉樹ミズナラ(Q. crispula)苗木、各10個体ずつ(シラカシは9個体)用いた。人工気象室内、気温20℃前後、日長12時間設定、光量子束密度約220umolm-2s-1で2019年4月25日からポット栽培した。栽培条件は一定とした。常緑広葉樹苗木では、人工気象室内での栽培開始直後に新たな葉が展開し、さらに6月にも葉が展開した。2019年12月から2020年2月にかけて落葉が進んだ。日長の短縮や気温の変化といった季節変化をつけずに落葉を抑え、古い齢の葉を保持しようとしたが、落葉が進んでしまった。葉が大きく厚いアカガシは、新しい葉の展開が進まず、古い葉が残る傾向が見られた。アラカシは、新しい葉の展開が進み、野外で展開した葉が全て落葉してしまい、人工気象室内で展開した葉に置き換わってしまう個体も見られた。同じ種内でも、個体差があり、その中でも展葉が早い個体では、落葉が進む傾向が見られた。ミズナラ苗木は、2019年6月27日から人工気象室内での栽培を開始し、すでに一斉展葉した葉を持ち、新しい一斉展葉も見られたが、野外で落葉している時期(2019年12月)でも葉が残り、さらに一斉展葉が始まった2020年2月から3月にかけて落葉が進んだ。生育環境に季節変化がないため、常緑樹でも落葉樹でも主に新しい葉が成長することによって、古い葉の落葉が進んだと考えられる。