| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-118 (Poster presentation)
タイの代表的な森林の種類に、乾燥フタバガキ林(Dry Dipterocarp Forest, DDF)がある。DDFは、主に樹高10m程度の落葉性フタバガキ科樹木(Shorea siamensis, Shorea obutusa)で構成される疎な森林で、丘の裾などの傾斜地に多く見られる。タイ林野庁による2002年の統計資料では、タイ全国の自然林の約1割がDDFであるとされている。
タイの低地林では乾季に火災が多く発生する。タイのコラート高原南縁部丘陵地に位置するタイ科学技術研究院サケラート環境ステーション内(14.51°N, 101.95°E)および周辺に存在するDDFでも同様に、ほぼ毎年、乾季の1~3月に火災が発生している。このサケラートのDDFにおいて毎年繰り返し発生する火災が当該森林に及ぼす影響やその役割を調べることを目的として、意図的に火災を発生させ、その前後の樹木生理や物質循環の変化を測定する実験を2018年から複数回にわたり実施している。
本報では、2018年12月および2019年12月に行った火災実験について、その概要と、火災発生中や前後の各種温度、火炎の移動の様子、燃焼した地上バイオマスの量、樹木のフェノロジーの変化など、発生した火災の基本的な指標とその影響の観測・観察結果を示す。