| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-127  (Poster presentation)

ヒノキ造林地における下刈りの省略が広葉樹の更新に及ぼす影響
Effects of non-bush cutting works on recruitment of broad-leaved tree species in a planted Japanese cypress (Chamaecyparis obtusa) forest

*渡邉仁志, 茂木靖和, 久田善純(岐阜県森林研究所)
*Hitoshi WATANABE, Yasukazu MOTEKI, Yoshizumi HISADA(Gifu Pref. Res. Inst. for For.)

多様な樹種で構成された森林への指向から,針葉樹造林地に侵入した広葉樹と植栽木を同時に育成する施業指針が求められている。本研究は下刈り省略が木本類の更新に及ぼす影響を明らかにするため,岐阜県郡上市のヒノキ再造林地(標高450m,傾斜35~40°の西向き斜面)における植栽木と天然更新した木本類(以下,更新種)の10年間の動態を,下刈りを一度も行わなかった省略区と4年間行った実施区とで比較した。
調査地は少なくとも3世代目の造林地で,伐採前には高木種の前生稚樹がほとんどなく,近傍に種子源となるような広葉樹林はなかった。皆伐時に下層植生を刈り払い,ヒノキを植栽した後,調査区(各300m2)で植栽木の成長,調査区内の小方形区(25m2/区)で更新種(高木種,小高木種,低木種)のサイズ構成を継続して調査した。10年目には小方形区を6箇所(25m2×6)に増やし,ヒノキと1.5m以上の更新種の状況を評価した。
実施区はヒノキのほぼ一斉林になり,省略区では更新種が混交した。省略区における更新種の動態をみると,幹本数は4年目のピーク後,キイチゴ類やアカメガシワなど遷移前期種が減少した。逆にシロモジなど低木種やヒサカキ,シキミなど小高木種は幹本数の減少程度が小さく,樹冠面積の拡張が顕著であった。ヒノキの直径成長は更新種により抑制されたものの樹高成長への影響は小さく,10年目にはヒノキの樹高は更新種を超えており,林冠の階層化が認められた。また,小高木種+低木種が全木本に占める割合は,幹本数で約90%,胸高断面積合計で約60%,樹冠面積で約70%に達した。しかし,主要な高木種であるアカメガシワやタムシバは幹本数が少なく,植栽木や低木種に被圧されていた。本調査地のように高木種の割合が低く先駆種に限定される場合は,針広混交林を短期間に育成するのは難しいと考えられた。


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