| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-131  (Poster presentation)

マレーシア・サバ州の伐採後熱帯低地二次林におけるキーストーン先駆種2属の動態
The dynamics of keystone pioneer trees in tropical lowland secondary forests in Sabah, Malaysia

*延澤真実, 澤田佳美, 北山兼弘(京都大学)
*Mami NOBUSAWA, Yoshimi SAWADA, Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ.)

ボルネオ島では森林伐採により劣化した二次林が広がっており、その中で様々なパイオニア種が混在している。このようなパイオニア樹木としてNeolamarckia属とMacaranga属が挙げられるが、隣り合った森林でも伐採からの経過年数が異なっているため、2属の混在の原因が、空間的に棲み分けているためなのか、伐採からの時間が異なるためなのか不明である。そこで本研究ではマレーシア・サバ州の熱帯低地林において、2属の生態的地位に違いがあるのか、ある場合は空間と時間のどちらで棲み分けているのか、を明らかにすることを目的とした。
まず2属の生態的地位に違いがあるかどうかを調べるため、54プロットに植生の多変量解析(DCA解析)を用いて、得られた多次元空間の傾度上で2属の分布のモードとレンジが異なるのかを調べた。次に、多次元空間の傾度が空間を表すのかを調べるため、DCA1軸と環境要因(土壌含水率、土壌pH、地面の傾斜)との関係を解析した。またNeolamarckia優占林とMacaranga優占林で環境要因の平均値を比較した。さらに、この傾度が時間を表すのかを調べるため、DCA1軸上における極相属とパイオニア属の位置関係を解析した。また、樹高が高いほど伐採からの年数が経過しているという前提のもと、 Neolamarckia優占林とMacaranga優占林とで植生高を比較した。
DCA解析の結果、2属の分布モードとレンジにはDCA1軸上に沿って差が示された。DCA1軸値と3つの環境要因の間には有意な相関関係はなかった。さらに、Neolamarckia優占林とMacaranga優占林とで環境要因の平均値に有意な差はなかった。一方、DCA1軸値の増加は、パイオニア属から極相種属への推移を表していた。また、植生高が低いグループではMacaranga優占林が、植生高が高いグループではNeolamarckia優占林が有意に多かった。以上の結果より、DCA1軸は時間を表しており、2属は遷移系列上でニッチ分割している可能性が高いことが示された。


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