| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-133 (Poster presentation)
多くの木本つるは,伐採地,森林内のギャップ,林縁など明るい条件で旺盛に成長するため,光要求性が高い植物とされている。一方,稚樹期に耐陰性を持ち,暗い林床に留まれる種も存在するなど,森林内外の光環境に対する応答は,種によって異なると考えられる。そこで本研究では,日本に広く分布する巻き付き型木本つる6種について,これらが同所的に出現する河畔林とその周辺の低木林,草地において野外調査を実施し,各種の光環境傾度に沿った分布様式を解析した。調査は鬼怒川中流域の河川敷に2m×2mの調査区を設定し,つる植物とそれ以外に分けて出現種のリストアップと各種の優占度判定を行った。さらに,木本つるが経験する光環境を評価するために,夏季と冬季に,相対PARとR/FR比を各調査区で計測した。TWINSPAN法により,種組成に基づく調査区の分類を行ったところ大きく4つの植生タイプが区分された。この4タイプは,群落の相観と生育地から以下,林内型,林縁型,草地型,疎林型と呼ぶ。6種の出現パターンを林床型で比較すると,クズは種組成が類似した草地型と疎林型での出現がほとんどであるのに対して,フジ,ミツバアケビ,スイカズラは,林内型と林縁型での出現がほとんどであった。またアオツヅラフジ,ツルウメモドキは草地型と林縁型での出現が多い傾向にあった。また,それぞれの木本つるが出現する光環境条件の比較から,アオツヅラフジ,クズは年中相対PARが高く季節変化が小さい条件,フジはR/FR比が年中低く季節変化が小さい条件,スイカズラ,ツルウメモドキ,ミツバアケビは相対PARとR/FR比の季節変化が同調する条件に分布が偏っていた。以上より,対象とした木本つる6種は,いずれも明るい光環境への変化に応答して旺盛に成長するが,その前段階ではそれぞれ特徴的な光条件をもたらす植生内で待機することが示唆された。