| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-134 (Poster presentation)
マルチスペクトル(MS)カメラで得られるMSデータから植生指数を解析することで,植生活性度を推定できる.一方で,MSデータには,撮影時の日照条件(ここでは太陽光の強さ)の違いが含まれる.日照条件が異なると,同一個体であっても異なる反射結果を示すことがあるため,植生活性度を推定する上で日照条件による補正は重要である.しかし,MSカメラによっては,撮影時の日照条件を記録できないものもある.本研究では,MSデータの適用可能な条件を明確にするため,補正の有無によって解析結果が異なるかを検証した.
硫化水素の濃度勾配のある3地点に,ブナ苗木(地点ごとに12個体)を植栽したプランターを設置し,MSカメラによる撮影と葉緑素計によるSPAD値の測定を実施した.補正の有無による解析結果の差を比較するため, MSデータから補正無し植生指数(GNDVIdn)と補正あり植生指数(GNDVIref)を計算した.硫化水素がブナ苗木に与えた影響をGNDVIdnおよびGNDVIrefが検出できたかを確認し,GNDVIdnおよびGNDVIrefと,SPAD値との相関関係を解析した.
GNDVIrefは硫化水素の濃度勾配と同様の大小関係を示した.補正後のMSデータによるGNDVIを用いることで,硫化水素による植生活性度の低下を検出できた.対して,GNDVIdnの値は,硫化水素の濃度勾配には沿わなかった.GNDVIrefと地点毎の個体のSPAD値との間には正の相関関係があった(r2 = 0.38 ~ 0.82, p < 0.05)一方,GNDVIdnは日照条件が他地点より安定していた1地点のみ正の相関関係が見られた.補正の有無によって解析結果が異なったことから,日照条件が大きく異なる条件下では,撮影時の日照条件を測定可能なMSカメラを用いることが肝要であることを確認した.
本研究はNEDO委託業務による研究開発の一環として実施したものである.