| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-138 (Poster presentation)
奄美大島の植生の研究は、自然度が高い島の中央付近に集中してきた。島内の地域による照葉樹林の違いを知るために、400m2の調査区13個、1600m2の調査区4つを島の広範囲に設置した。直径1㎝以上の植物について直径、種名、一部個体の高さを記録した。1600m2調査区は400m2単位の平均値を求め、400m2の調査区17個として解析した。最近伐採されたと思われる調査区を若齢林分、そうでない区を老齢林分とした。
樹木、ツル、竹の本数は10,159本となり、122種あった。常緑広葉樹が老齢・若齢林分ともにBAの90%以上を占めた。最大直径はオキナワジイの103㎝であったが、樹高の最高はリュウキュウマツの22mで、大径木は少なかった。よく萌芽するオキナワジイは老齢林分若齢林分の両方でよく優占した。リュウキュウマツは若齢林分だけ出現し、イスノキは老齢林分に多かった。老齢林分は若い林分より胸高断面積(BA)が多く、本数が少なく、種数が多い傾向があったが、統計的には有意ではなかった。種数に対して、本数・BA・最大直径・森林型・標高・調査区の位置(南西端の調査区からの距離)との関係を一般線形モデルで解析すると、種数は本数と調査区の位置と有意な相関があった。島の中央付近で最も種数、多様性が高く、南西側で少し減り、北東側が最も少なかった。北東側は遺跡が多いことや最近の土地利用も盛んであることが、このような違いを生じたのであろう。種別BAの値からDCAで調査区間の類似性を比較すると老齢林分は比較的まとまり、若齢林分は散らばり様々なタイプがあるようだ。これには松枯れによるリュウキュウマツの衰退度に地域差があることが関連する可能性がある。種別の最大直径と最高樹高の頻度分布は、直径がサイズについて単調減少するのに樹高は2山形分布になった。樹高の方が種による階層性が生じやすいのかもしれない。