| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-147  (Poster presentation)

中央アルプス固有種コマウスユキソウの分布と微地形:UAV写真測量を利用して
Topographical distribution of Leontopodium shinanense Kitam., an endemic species in Central Alps of Japan: using UAV photogrammetry

*尾関雅章, 浜田崇(長野県環境保全研究所)
*Masaaki OZEKI, Takashi HAMADA(Nagano Env. Cons. Res. Inst.)

近年、ドローン(UAV)の高機能化およびSfM-MVS等の画像解析技術が急速に進展し、これまでのリモートセンシングでは適時的で高解像度の観測が困難であった山岳地においても、可搬性に優れたUAVを用いてそうした観測が可能となってきた。本研究では、より低コスト(作業負担、費用)な高山植生モニタリング手法の検討のため、UAVの中でも特に携行の容易な小型軽量UAVを用いて、高山帯においてUAV撮影画像からの高山植物の地形分布の把握を試みた。

調査対象としたコマウスユキソウ(ヒメウスユキソウ)Leontopodium shinanense Kitam. は,高山帯の風衝草原や岩角地 に生育するキク科ウスユキソウ属の多年草で,本州中部山岳の木曽山脈固有種である。調査地は、コマウスユキソウ生育地のうち、植被階状土が形成される典型的な生育地とし、階状土と直交するように1m×25mの帯状調査区を設定した。同調査区の空中写真を2020年9月に小型軽量UAVにより地上高約5mから撮影した。地上基準点(GCP)は調査区周辺の10地点に設置し、低価格2周波GNSSを用いて、ネットワーク型RTK測量を行った。

UAV撮影画像から、SfM-MVSソフトウェアを用いて、オルソモザイク画像(解像度1mm)と数値表層モデル(DSM、解像度1cm)を作成した。オルソモザイク画像の目視判読と現地調査により、調査区内に生育するコマウスユキソウ225個体(株)の生育位置が確認された。DSMから調査区の地形断面を作成すると、コマウスユキソウは階状土の段差部分の植被内に多く生育しており、その段差のより大きい箇所に分布が集中する傾向が確認された。この試行結果から、小型軽量UAVによる高解像度の空中写真撮影は、高山植生の把握や植生変化モニタリングに有効な手法の一つとなるものと考えられた。


日本生態学会