| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-148 (Poster presentation)
我が国では半自然草原の生物多様性の低下や劣化が課題であるとされている。しかし、半自然草原の質的変化やその要因に関する知見は未だ少なく、草原生態系の基盤である草原群落の生物多様性や環境評価が難しくなっている。そこで本研究の目的は、大規模な草原景観を有し、現在も野焼き等の管理が実施されている阿蘇くじゅう国立公園「くじゅう地域」において基礎的知見を得るため、半自然草原群落と立地環境条件との関係を明らかにすることとした。植生および立地環境調査は2地区(K・Y)において半自然草原および湿生草原、森林の計8地点を設定し、2020年8月から10月に実施された。また半自然草原の管理履歴や希少植物種の分布等に関する聞き取り調査は関係団体の代表者に対面方式で2019年と2020年に実施された。
本調査で選抜した半自然草原はネザサやカワラマツバを群集標徴種とするネザサ―ススキ群集に分類されると考えられた。本群集において、特に出現種数が高かった群落ではトダシバやオカルガヤなどのススキ以外のイネ科多年生草本が優占し、サワヒヨドリやオカトラノオの出現頻度が高く、クララやRDB種のアソノコギリソウの出現が特徴的だった。トダシバとオカルガヤの優占度が高いK地区の半自然草原では、刈取りと野焼き管理が実施されていた。Y地区では管理は野焼き管理のみで、群落高が低いのはニホンジカの被食の影響と考えられた。湿生草原はヌマガヤやヨシが優占し、ハンカイソウやRDB種のシムラニンジン、クサレダマが出現し、ヌマガヤ―シカクイ群落(荒金2002)に近い群落であり、前述した半自然草原群落と同様に出現種数は高かった。森林群落はカシワやクヌギの疎林では林床の草本層はネザサとススキが優占し、トダシバやオカルガヤは認められず、出現種数は低かった。本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。