| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-150  (Poster presentation)

津軽地方における主要樹木3種の長期成長動向と気候応答反応
Long term growth trends of main tree species in Tsugaru district, Aomori Pref.

*石川幸男(弘前大白神センター)
*Yukio ISHIKAWA(Shirakami Center, Hirosaki U.)

わが国の森林において、温暖化が主要樹木の成長に与える長期の影響を明らかにした例は少ない。昨年度の名古屋大会で青森県津軽地方に生育するブナの成長増加傾向を報じる予定でいたが、学会が開催されなかったことから、その結果に加えて、同県の主要樹木であるヒバ、分布北限に相当するコメツガも加えて報告を行う。ブナは、津軽地方南部、白神岳と岩木山の中腹のブナ林(標高約700mから900m)でそれぞれ21個体、12個体から原則2方向で年輪サンプルを採取した。ヒバは青森県南部大鰐町の早瀬野保護林(約330m)の25個体、コメツガは岩木山西方の追子森山頂付近(約1100m)の17個体を対象にした。採取した年輪サンプルは標準的な年輪年代学の手法に基づいて照合した。これらの中には、ギャップ形成によるものと思われる年輪幅の急激な変化を示す個体も見られたが、気候変動の影響の検討には適さないことから除外し、急激な変化を示さない個体だけを解析対象とした。
一般に、周辺に競争相手がいないオープンな環境に生育する樹木では加齢にともなって年輪幅が減少し、その過程は負の指数関数で近似できる。そこで各時系列をまず負の指数関数で近似し、あてはまらない系列では傾きが負の直線を用いるか各個体の平均値を用い、予測される年輪幅に対する実測値の値を指数化して加齢の影響を除去し、長期動向を検討した。これら各系列の年輪幅指数を平均した結果、ブナでは白神岳、岩木山双方で1900年代の後半から年輪幅が上昇傾向にあることが確認された。この変化の時期は、青森市における年平均気温の顕著な上昇時期とよく一致していることから、温暖化の影響によるものと考えられる。これに対してヒバとコメツガではブナほど顕著な増加傾向はみられなかった。
以上の結果に、毎年の年輪幅に影響を与える気象要因の解析結果を加えて、温暖化がこれらの種の成長に与える長期的影響を考察する。


日本生態学会