| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-159 (Poster presentation)
スギ林は、日本の代表的な森林生態系の一つである。昨年度、気候モデルMIROC5の出力値を利用した生態系モデルによるスギ林生態系の炭素固定量の試算結果を報告したが、その推定値は気候モデル出力値に強く依存する。そこで本研究では、5つの気候モデル(HadGEM2-ES、MRI-CGCM3、CSIRO-Mk3-6-0、MIROC5、GFDL-CM3)の出力値を利用して、温量指数が異なる全国12地点(沖縄、鹿児島、宮崎、長崎、静岡、福岡、茨城、栃木、香川、愛媛、岐阜、福島)を対象に、温暖化に伴うスギ林の炭素固定能の変動に関して将来予測の不確実性も含めて検討を行った。生態系モデルは、岐阜県高山市の常緑針葉樹林サイトのフラックス観測値(2006-2010)を用いて検証済である。現在気象値として、農研機構1kmメッシュ気象データ(日値)と近隣アメダスの気象値(1時値)をもとに、1996年から2000年までの5年間の各気象値(気温、降水量、日射量、水蒸気圧、大気圧、風速)の1時間推定値を整備した。将来予測値として、5つの気候モデルの将来予測値データ(PCP2.6およびHistorical)を利用し、RCO2.6およびHistoricalの各気象要素の差または比を現在値(1996~2000年)の各気象値(気温、降水量、日射量)の1時間値に上乗せする形の差分法により、全国12地点の将来気候(2096-2100,RCP2.6シナリオ)における一時間毎の気象データの整備を行った。これらの将来予測値、現在気候値データを入力データとして、生態系モデルを用いた炭素収支の将来予測を全国12地点で実施した。また推定の際には、CO2濃度上昇を考慮した場合としなかった場合の2通りの推定を行いCO2施肥の影響についても確認した。気候モデル間で推定値に幅があるものの、いずれの気候モデルでも、寒冷な地域ほど純一次生産量が増加する傾向にあり、一部の気候モデルでは温暖な地域で純一次生産量が減少する可能性も見いだされた。