| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-160 (Poster presentation)
河川を介した放射性セシウム(Cs)の移行においては、懸濁物質(SS)に吸着された懸濁態放射性Csとしての輸送が卓越している。特に、平水時と比較して河川水中のSS濃度が大幅に上昇する出水時に輸送される懸濁態放射性Cs量が年間総輸送量に占める割合は非常に高いことが明らかとなっている。この事は、出水時に付加されるSS成分に吸着された放射性Csが大きく寄与することを意味している。一方で、河川の源流域に位置する森林では除染等の対策が実施されておらず、出水時に森林から高濃度の放射性Csを含んだSSの流出が懸念される。そこで、本発表では河川水中のSS濃度の変化と、そのCs-137濃度、全炭素濃度(TC)及び安定炭素同位体組成(d13C)の変化を明らかにすることで、出水時の河川を流下する懸濁態放射性Csの起源について検討した。
調査は福島県川俣町及び伊達市を流れる広瀬川流域で行った。流域内の3つの観測地点において、定期的に平水時の河川水を採水した。さらに、2017年から2019年の期間で6回の出水イベント時に採水を実施した。採水した試料をCsモニタリング用カートリッジフィルタに捕集し、Ge半導体検出器によりSS中のCs-137濃度を求めた。さらに、予備試料からSSをGF/F上に捕集し、EA-IRMSによりTC及びd13Cを測定した。
結果から、各観測地点において平水時のSSは広いレンジのCs-137濃度を示す一方で、出水時にはSS濃度の上昇に伴いそのCs-137濃度は低下する傾向を示していた。従って、出水時には懸濁態放射性Csの輸送量は増加するものの、付加されたSSのCs-137濃度が低く、希釈効果によりSSそのもののCs-137濃度は低下すると考えられた。発表では、TC及びd13C測定の結果も併せて、出水時にSS濃度を上昇させる成分の特徴及びその起源等についても検討する。