| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-162 (Poster presentation)
コケは、根を持たず体表から水や栄養を吸収できるため、岩石上に直接付着して生育することができる。しかし、すべてのコケが岩石上に生えるわけではなく、種によって好む岩石が異なることが知られているが、その原因は明らかになっていない。岩石選択性の要因の1つとして、岩石からの元素の供給が考えられるが、コケ中の元素濃度と生育基物中のそれらとの関係は未解明である。
本研究では、石灰岩上に生えているヤマトキヌタゴケ(Homomallium japonica-adnatum (Broth.) Broth.)の葉中の元素濃度を低真空SEM-EDSを用いて測定した。コケの葉上にはµmオーダーサイズの微小粒子が一面に存在している様子が見られた。コケ中の元素量への微小粒子の影響を評価するために、多変量解析を用いた分析と点抽出分析の結果を比較した結果、微小粒子の影響は0.5 wt%以下であることがわかった。この解析の結果と先行研究のデータから、コケとコケが生えていた岩石・土中のCaとMg量の相関を評価した。岩石上に生えるコケでは、CaとMgは正の相関(相関係数r>0)を示した。一方、土に生えるコケでは負の相関(相関係数r<0)がみられた。以上の結果から、コケとコケの生育基物中の元素量相関を議論する際には、コケの生育基物による場合分け(岩石上か土上か)が必要であると考えられる。