| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-164  (Poster presentation)

ミミズのフン団粒が土壌からのCO2放出に及ぼす影響
Effects of earthworm casts on CO2 emission from soil

*田中草太(原子力機構), 永野博彦(名古屋大学), 安藤麻里子(原子力機構), 小嵐淳(原子力機構)
*Sota TANAKA(JAEA), Hirohiko NAGANO(Nagoya Univ.), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Jun KOARASHI(JAEA)

ミミズは、土壌有機物を摂食し、分解に寄与することで、 CO2放出を促進させる一方で、排泄により生じたフン団粒は、有機物を物理的に隔離するため CO2放出を抑制する。このようにミミズは土壌有機物に対して、分解・隔離の相反する効果をもたらす。このため、ミミズの活動が土壌からのCO2放出を促進するのか抑制するのかについては、未だに結論が得られていない。本研究では、土壌から放出されるCO2と形成される土壌団粒の定量評価が可能な培養実験系を構築し、ミミズが土壌からのCO2放出に与える影響を短期的および長期的に評価した。ミミズを投入した土壌(ミミズ区)に対して、実験フェーズ1(~28日)とミミズ除去後のフェーズ2(28~181日)において、土壌からのCO2放出速度を測定した。ミミズを投入しない土壌(対照区)も用意し、同様にCO2放出速度を測定した。その結果、フェーズ1(14~28日目)ではミミズ区のCO2放出速度が対照区よりも有意に高くなったが、フェーズ2の後半(122~181日目)ではミミズ区のCO2放出速度が対照区よりも有意に低くなった。CO2放出積算量は、21~122日目まではミミズ区が対照区を上回っていたが、150日目以降に逆転した。また、耐水性団粒の形成をミミズ区と対照区で比較すると、フェーズ1と2の終了時にミミズ区において、直径2 mm以上のマクロ団粒の増加が認められた。以上より、ミミズの活動により、初期段階では土壌有機物の摂食によって土壌からのCO2放出が促進されるが、長期的には形成されたマクロ団粒による土壌有機炭素の隔離が生じ、CO2放出が抑制される可能性が示唆された。


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