| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-171  (Poster presentation)

熱重量分析と保水特性の解明による熱帯と北方泥炭の燃焼特性の比較
Comparison of physical caracteristics of boreal and tropical peat.

*嶋村鉄也(愛媛大学), 井上亮(愛媛大学), 杉元宏行(愛媛大学), 久米崇(愛媛大学), Tadao YAMAMOTO(Hokkaido Univ.), POESIEErna(パランカラヤ大学)
*Tetsuya SHIMAMURA(Ehime Univ.), Ryo INOUE(Ehime Univ.), Hiroyuki SUGIMOTO(Ehime Univ.), Takashi KUME(Ehime Univ.), Tadao YAMAMOTO(Hokkaido Univ.), Erna S POESIE(University of Palangka Raya)

泥炭は植物遺体が冠水条件下で未分解のまま堆積した有機質土壌である。寒帯ではミズゴケやヨシなどの遺体が、熱帯では木本植物の遺体がその基質となっている。この泥炭土壌は開発の際に排水がおこなわれ、乾燥し、燃えやすいものとなる。熱帯域では開発により多くの泥炭地で火災が頻発し、それに伴い膨大な量の温室効果ガスの放出や煙害などが生じ深刻な環境問題となっている。本研究ではこのような状況に鑑み、熱帯および北方泥炭の保水性や燃焼特性を計測した。これらの燃焼に関わる特性は、特に熱帯域においてはその不均一性などの理由から理解が進んでいないからである。泥炭は北海道新篠津村の泥炭復興フィールドから採取した北方泥炭と、インドネシア・中央カリマンタン州の混交林型の森林および、火災被害地より熱帯泥炭を採取し、その保水性と燃焼特性を調べた。
 保水性試験の結果、北方泥炭は飽和時~pF1.0で90%以上、熱帯泥炭は60%、pF1.0で50%程度の体積含水率であった。また、pF4.2で北方泥炭は40%程度、熱帯泥炭で20%程度の体積含水率であった。火災被災地の泥炭も森林部の泥炭と同程度の値を示した。含水比は飽和時~pF1.0のとき、それぞれ北方泥炭で700%~800%、熱帯泥炭では300%前後の値であり、北方泥炭の保水性が高いことが示された。熱帯泥炭の熱重量分析を行った結果、ヒノキなどの木材を燃焼させた際に生じる300℃前後におけるセルロースの燃焼による発熱とその蒸発による吸熱を確認することができず、発熱反応が継続していた。
 これらの結果より、1)熱帯泥炭は北方泥炭よりも保水力は低いということ、2)火災を経験した場所の泥炭も、経験していない場所の泥炭も保水性に大きな違いがない可能性が示唆されたこと、3)熱帯泥炭は木材と同様の燃焼特性を持つと考えられたが、セルロースの分解が進行しており、木材と異なる燃焼特性を持つ可能性が示唆された。


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