| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-176  (Poster presentation)

警告臭の擬態の可能性ーアカハライモリとツチガエルのニオイ成分分析による検証
Possibility of Mimicry in Warning Odors-Analysis of Volatile Compounds in Japanese fire belly newt and Wrinkled Frog

*吉村友里(九州大学)
*Yuri YOSHIMURA(Kyushu Univ.)

有毒な種などが自らの危険性を示す警告シグナルは、派手な体色などの「警告色」が有名である。だが、夜行性の種や色覚を持たない種に対しては、色などの視覚シグナルよりも嗅覚シグナルが有効であると考えられる。日本に生息するツチガエル(Glandirana rugosa)は、皮膚から出る分泌物にカエルを好んで食べるシマヘビに対する捕食回避効果があり、それは特有のニオイを有している。このニオイ自体が、ヘビに対して警告シグナル(警告臭)として働くことを示唆する結果も得られている。一方、猛毒のテトロドトキシンを持つことで知られるアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)も、捕まえるなどの刺激を与えるとニオイを出す。両者のニオイを嗅いだときの印象が似ていることから、毒を持つ種が似た体色をもつミュラー擬態がニオイにおいても存在する可能性を見出し、両種のニオイ分析による検証を試みた。
本研究では、ツチガエルとアカハライモリのニオイの類似性を化学的に検証するめ、両者のニオイの成分分析を行った。ニオイを捕集する方法には、揮発性成分の定性分析に用いられる固層マクロ抽出法(SPME法)を採用した。まず、両種の体表をピンセットで刺激しながら石英ウールで拭き取り、ニオイが付着した石英ウールを専用のガラス瓶に入れ、瓶内に揮発した成分をSPMEファイバーに吸着させた。そのファイバーをガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)で測定し、得られたマススペクトルデータをライブラリー (NIST 11)と照合する等して解析を行った。
本分析の結果、ツチガエルとアカハライモリから検出された主要成分において、共通成分を確認することはできなかった。両種のニオイの印象は似ていることから、今後、成分を同定することで、その特性や捕食者への学習効果等の面からも警告臭の擬態の可能性について検証を試みる予定である。


日本生態学会