| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-178  (Poster presentation)

「コウノトリ育む農法」実施農家の農法への認識の多様性
Farmers' Perceptions of Stork-Friendly Farming Method

*福島庸介, 内藤和明(兵庫県立大学)
*Yosuke FUKUSHIMA, Kazuaki NAITO(University of Hyogo)

兵庫県の豊岡盆地では、再導入されたコウノトリの餌環境を改善することを目的の一つとして、環境保全型稲作の「コウノトリ育む農法」(以下「育む農法」と記載)が実施されている。この比較的新しい稲作栽培技術である育む農法の拡大を促進するために、行政機関等は農業普及活動を通じて農家への経営・技術的支援を行っている。そのような農業普及策が農家による環境保全型農法の採用に与える効果を検証した既往研究は、農法の経済性・技術的属性だけではなく、個々の農家の環境保全に対する期待や認識が要因の一つとなりえることを指摘しており、そのような農家の認識の多様を理解することが農業普及策の改善に資すると考えられている。そこで、本研究では農家の育む農法に対する認識の多様性を定量的手法で検証することを目的とし、2018年に農家328軒を対象にアンケート調査を行った。農家の属性、環境意識や育む農法についての認識についての14項目の質問についての5段階のリッカート尺度に基づく回答を因子分析及びクラスター分析で解析し、農家の類型化を行った。アンケート調査における有効回答数は165件(有効回答率:47%)であった。因子分析により抽出した4つの因子について、因子を構成する質問項目の中から因子負荷量の絶対値の大きい項目に着目して以下の通りに名前をつけた:第1因子「経営・環境面における総合的な必要性の認識」、第2因子「環境意識」、第3因子「収益増の期待」、第4因子「経済性の重視」。また、因子得点に基づいてクラスター分析を行ったところ、農家が4つのクラスターにわけられた。各クラスターを構成する農家の数は、第1クラスターが90軒、第2クラスターが25軒、第3クラスターが29軒、第4クラスターが14軒となった。発表では、類型化という手法によって育む農法についての農家の認識の多様性についての理解を深めることが育む農法の普及に貢献する可能性について考察する。


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