| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-179 (Poster presentation)
バラ属に虫こぶを形成するバラタマバチ族は世界で2属約60種が知られている。タマバチ科の虫こぶからは、虫こぶ形成蜂のほか、他者の虫こぶに居候するタマバチ科の同居蜂、虫こぶ内部の昆虫に捕食寄生する寄生蜂等が脱出するが、本族の虫こぶでは、同居蜂としてキイチゴタマバチ族のPericlistus属が、寄生蜂としてカタビロコバチ科等のコバチ類が知られる。本研究では、日本のバラタマバチ族とその虫こぶから脱出する同居蜂、寄生蜂について、文献調査および野外調査によってその多様性情報をとりまとめた。虫こぶ形成蜂は、バラハタマバチ(Diplolepis japonica)とハマナスメトゲコブタマバチ(Liebelia fukudae)を認めた。前者はノイバラ(Rosa multiflora)等にバラハタマフシ、後者はハマナス(R. rugosa)およびタカネバラ(R. nipponensis)にハマナスメトゲコブフシとよばれる虫こぶを形成する。同居蜂は前者の虫こぶからのみ記録されており、バラタマハラアカイソウロウタマバチ(Periclistus natalis)とバラタマクロイソウロウタマバチ(P. quinlani)の2種を認めた。寄生蜂は、前者からカタビロコバチ科の一種(Eurytoma sp.)とヒメコバチ科の一種(Tetrastichus sp.)が、後者からオナガコバチ科のGlyphomerus stigma、カタビロコバチ科の一種(Eurytoma sp.)、ヒメバチ科の一種(Orthopelma sp.)が記録されていた。演者らによる野外調査では、これらの虫こぶから新たな同居蜂、寄生蜂は得られなかったが、新たにタマバチ科未同定種による虫こぶ1種類をハマナスより発見した。ハマナスからは上記のほかにも未同定種による2種類の虫こぶがすでに記録されており、少なくとも日本のバラ属3種に5種類のタマバチ科の虫こぶが存在することが確認された。今後、日本産のバラ属全種を調査することで、日本のバラ類に虫こぶをつくるタマバチとその同居蜂、寄生蜂の多様性をいっそう明らかにすることが期待される。