| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-187  (Poster presentation)

種間関係は高山植物の気候変動応答に影響するかー多種の同時分布推定による検討ー 【B】
Does inter-species relationship affect climate change prediction in alpine plants ? - analysis by Joint SDM- 【B】

*石濱史子(国立環境研究所), 雨谷教弘((公財)知床財団), 小熊宏之(国立環境研究所)
*Fumiko ISHIHAMA(Natl Inst Env Studies), Noriyuki AMAGAI(Shiretoko Nature Foundation), Hiroyuki OGUMA(Natl Inst Env Studies)

高山植物は特に気候変動に脆弱であるとされており、効果的な保全対策を立案するためにも、的確な将来の分布変化予測が欠かせない。気候変動下での分布変化においては、これまでの気候条件で成立していた植生からの入れ替わりのプロセスが伴うため、競争などの種間相互作用が分布変化動態に大きく影響する可能性がある。従来の分布推定モデルは、1種単独で構築されていたため種間相互作用を考慮することが困難であったが、近年手法が発達した多種の同時分布推定モデル(Joint SDM)では、種間の分布相関を組み込むことで、種間相互作用も検出できる可能性があると期待されている。

本研究では、国内有数の高山植生を擁する大雪山国立公園において、気候変動への適応策検討のため、将来気候下での植物種の分布予測を行う。昨年度の発表では、JointSDM解析の結果、いくつか種間相関は検出されたものの、他の高山植物を特に強く競争排除すると想定されるササ・ハイマツとの関係がほとんど検出されなかった。Joint SDM解析では、データの解像度等の質が種間相関の検出に強く影響すると言われており、この結果も、分析に用いたデータの調査範囲の偏りに起因すると考えられた。今回は新たに、空中写真に基づいてササ・ハイマツが優占する地点のデータを加えた上でJoint SDMと従来のSDMでの解析の結果比較を行うとともに、JSDMの結果解釈とデータの質に関しても議論する。


日本生態学会