| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-196  (Poster presentation)

景観と進化をつなぐ:都市の雑草で生じた収斂進化の要因を景観要素から検証する
landscape evolutionary ecology: explaining the convergent evolution in the city by landscape ecological approach.

*深野祐也(東京大学), 内田圭(東京大学), 立木佑弥(東京都立大学)
*Yuya FUKANO(The University of Tokyo), Kei UCHIDA(The University of Tokyo), Yuuya TACHIKI(Tokyo Metropolitan University)

景観生態学や景観遺伝学の研究では、景観の変化が生物間相互作用や物理的環境の変化を通じて、生物群集や個体群、生物の移動にどのような影響を与えるかが理解されてきた。しかし、景観の変化が、特定の種の局所適応や進化的変化にどのような影響を与えるかは、その解析方法も含め、ほとんど研究されていない。われわれは、世界規模で進展する人為的な景観要素である都市と農地に注目し、そこに生育する雑草が、それぞれの環境にどのように局所適応しているのかを、景観要素の関連から検証した。
 メヒシバ・オヒシバの都市・農地系統の形態を比較したところ、草姿に関して、2種で同じような形態的分化が見られた。両種とも都市系統は匍匐型・農地系統は直立型という明確な草姿の遺伝的分化を示した。栽培実験により、都市の匍匐型は光を巡る競争が弱い栽培環境では成長率が高いが、競争が強いと競争に負けて成長率が低いことが示された。都市は農地に比べ植物密度が低く光を巡る競争が弱い。このような都市と農地の競争環境の違いが選択圧となり、メヒシバとオヒシバの草姿に収斂進化をもたらしたことが示唆される。
 今回観察された草姿における局所適応の空間的なバラつきが、都市と農地の景観要素にどのように影響を受けているかを定量化するため、景観生態学を応用した手法を開発した。解析の結果、各系統の採集地周辺の人口構造物の面積が、その系統の草姿に有意な影響を与えていた。つまり、人口構造物が多い地域ほど匍匐型の草姿になる傾向があった。バッファー解析によって、局所適応の空間的なバラつきを説明するサイズを推定したところ、採集地点の周囲100mの景観要素が、草姿のバラつきを最も良く予測できることが分かった。これらの結果は、都市や農地などの人為環境では、植物が急速に収斂進化すること、景観生態学的手法でその適応進化の空間的なバラつきやスケールを検証できることを示している。


日本生態学会