| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-202  (Poster presentation)

緑藻で発見した接合子の発生切り替えが生活環の進化に果たす役割
Roles of zygote developmental switching in life cycle evolution of green seaweeds

*堀之内祐介(千葉大・海洋バイオ), 大槻久(総研大・先導研), 富樫辰也(千葉大・海洋バイオ)
*Yusuke HORINOUCHI(Chiba Univ.), Hisashi OHTSUKI(SOKENDAI), Tatsuya TOGASHI(Chiba Univ.)

植物は多細胞の1倍体と2倍体の世代を交代する特徴的な生活環を示す。この生活環は単細胞の2倍体世代を持つ生活環から、多細胞の胞子体の獲得を通して進化したと考えられている。この進化的革新は植物の多様化の要であるが、その獲得の過程についてはほとんど分かっていない。例えば、単細胞体から多細胞の胞子体への進化における中間的な、または異なる段階についての情報はほとんどなく、胞子体を持つことの進化的な利益と制限についてもほとんど分かっていない。海産緑藻のヒビミドロ目は、単細胞の2倍体のシストを持つことが知られているが、一部の種は胞子体を派生的に獲得している。本研究では、単細胞のシストを持つことで知られるヒビミドロ目の1種エゾヒトエグサで、接合子が発生を切り替えて胞子体に発生するという生活環の種内多型が存在することを発見した。この胞子体の生殖能力はシストと比べて高かった。胞子体の形態発生は、配偶体と極めて似ており、胞子体獲得における1倍体の多細胞発生プログラムの流用が生じたこと、発生的な制約が緩やかであることを示唆した。数理モデルは胞子体の進化が生息環境からの制限を受けていること、それにより、生活環の多型が最適戦略となることを示唆した。この多型を考慮することにより、異なる環境条件下で異なる生活環が最適となり、ヒビミドロ目の生活環の多様性を説明できた。


日本生態学会