| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-204 (Poster presentation)
生物の遺伝構造は、過去の地史と進化的背景を反映する。千葉県の房総半島の山地の動物種は、過去に関東西部から房総半島の元となる陸塊が生じ、その後島として孤立していた地史的要因を基に、現在接続する関東北部よりも関東西部の山地の個体群に近縁だとされており、例えば房総半島のクロオサムシは関東地方北東部亜種ではなく北西部亜種である。しかしながら地表徘徊性動物の調査研究例は乏しいままである。本研究では、関東の山地全域の森林に分布するニホンヒメフナムシ種群の分子系統学的研究によって房総半島の個体群の進化プロセスの推定を行った。関東地方全域とその周辺から採集されたニホンヒメフナムシ種群のミトコンドリアDNAのCOI遺伝子と核DNAの18S rRNA遺伝子を用いて、系統解析を行った。
房総半島から採集されたニホンヒメフナムシ種群からは関東西部に近縁な個体群が発見され、さらに関東北部に近縁な個体群も含まれることが明らかとなった。作成された系統樹では関東西部や関東北部の個体群が房総半島の個体群から成るクレードの基部に位置した。また、房総半島の両群は交尾器の形態が異なり、生殖隔離が示唆された。以上の形態の比較および遺伝子に基づいた系統解析の結果から房総半島のニホンヒメフナムシ種群の進化プロセスについて考察する。