| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-206 (Poster presentation)
近年、種多様化速度と形質の進化速度の関係について、様々な系統で検証されている。種多様性が高い系統には多様な形質の種が見られるため、急速な種多様化は形質の多様化と関係していると予想されてきたが、いまだ統一的な見解には至っていない。ボルネオ熱帯雨林は多様な樹木が生育し、様々な種数の系統が存在するため、種多様化と形質の多様化の関係について調べるのに適した材料である。ボルネオ島熱帯雨林では、近縁な種が多様なニッチを持つことで多種の共存を可能にしていると考えられているため、種多様化速度の速い系統ではニッチの進化速度も速いと予想される。
ボルネオ島のランビルヒルズ国立公園に生育する樹木699種について葉緑体DNAの3領域(rbcL、matK、trnH-psbA)に基づいて系統関係を推定し、全木センサスのデータから定量した種ごとの3つのニッチ(生活形ニッチ、動態ニッチ、ハビタットニッチ)の進化速度を推定した。科ごとに種多様化速度とハビタットニッチの多様化速度を平均したところ、種多様化とニッチ多様化の間に有意な正の相関が見られた。また、ハビタットニッチの多様化速度が高い科と低い科で局所群集の系統多様性を比較したところ、多様化速度の高い科で系統過分散の傾向が見られた。これは、ハビタットニッチの多様化速度の速い科では、同一科内の系統的に離れた種同士が似たハビタットニッチを持つ収斂が起きたために、似た環境の局所群集内に系統的に離れた種が生育しているためと考えられる。