| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-208 (Poster presentation)
熱帯雨林樹木は近縁種が多く系統推定が難しい。本研究では、まず、ボルネオ熱帯雨林の中でも近縁種の多いフタバガキ科とフトモモ科の系統推定をMIG seq法とRAD seq法で試みた。次に、Bayesian Analysis of Macroevolutionary Mixtures(BAMM)で生態特性(最大直径、動態特性、ハビタット特性)の多様化速度を解析した。更に、フトモモ科フトモモ属(Syzygium)で交雑解析を行い、過去に種間交雑が起きた可能性を探った。その結果、多様化速度は生態特性によって異なり、最大直径の多様化速度は古い時代で速く徐々に低下したのに対して、ハビタット特性では時代が経つにつれて速くなり、Dipterocarpus属、Dryobalanops属、Shorea属Yellow merantiの過去1千万年の多様化速度は特に速かった。動態特性の多様化速度は、Shorea属の一部の系統のみ過去1千万~数百万年に大きく増加した。交雑解析はフトモモ属で過去2千万年以降に複数回、種間で浸透交雑が起きた可能性を示唆し、この時期にハビタット特性の多様化速度も上昇していた。以上より、近縁種の多いフタバガキ科とフトモモ科は、寒冷化が進んだ後期中新世から鮮新世(今から約1千万年~2.5百万年前)に、種間交雑とハビタット特性などのニッチ多様化を伴って急速に種が多様化したことが示唆された。
We estimated the phylogeny and hybridization of the diverse tropical tree families [Dipterocarpaceae and Myrtaceae (Syzygium)] in a Bornean rainforest using MIG-seq and RAD-seq. We used Bayesian analysis of macroevolutionary mixtures (BAMM) to estimate the dynamics of speciation rate and diversification rates of life-form (maximum size), demography, and habitat niches. We also examined past hybridization in Syzygium. The results suggest that Dipterocarpaceae and Syzygium evolved rapidly with introgression and habitat diversification during 10-2.5 Mya.