| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-212 (Poster presentation)
種苗移動は、移動した苗から育った木の生育だけでなく、その木の交配と次世代の生育にも影響するかもしれない。複数の産地から移植されたミズナラの木とその実生を日本の南と北に位置する2つの試験地で調べた。それらの試験地と産地は、気候的条件で7つの地域にまとめられた。試験地と同じ地域の産地の木を地元集団とし、試験地と異なる地域の産地の木を他所集団とした。木の植栽面積あたり幹断面積は、両方の試験地において他所集団より地元集団で大きかった。それぞれの試験地で地元集団と他所集団のマイクロサテライトの遺伝子頻度を用いて、他所由来比率を推定した。地元集団と他所集団の遺伝的分化は比較的小さかった(0.022 ≤ FST ≤ 0.034)が、他所由来比率により地元集団と他所集団の木を区別できた。木の植栽面積あたり幹断面積は、他所由来比率が高くなると、両方の試験地で減少した。木と実生の他所由来比率の分布は異なり、地元集団と他所集団の間の交配から実生ができたことを示している。実生の乾燥重量は、他所由来比率が高くなると、北の試験地で増加し、南の試験地で減少した。つまり、両方の試験地で南の産地の木の実生が大きく、低緯度で堅果のサイズが大きい遺伝的な性質によると考えられる。これらのミズナラの結果は、地域間の種苗移動が移植された木の生育を低下させ、異なる地域に由来する木の間の交配をもたらすことを示唆する。