| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-214  (Poster presentation)

グリーンアノールにおける音声コミュニケーションの検証
Testing the use of acoustic communication by Green Anole

*内藤梨沙, 堀田政二, 志甫拓巳, 岩井紀子(農工大)
*Risa NAITO, Seiji HOTTA, Takumi SHIHO, Noriko IWAI(TUAT)

特定外来生物グリーンアノールは、小笠原諸島に侵入して固有の生態系に大きな脅威を与えており、より効果的な防除方法が求められている。本種は優れた聴覚を持つ一方で、ヒトの可聴域内で音声を発しないため、その聴覚を利用した防除方法は検討されていない。しかし、同属のグラハムアノールは危難音を出すことから、グリーンアノールもヒトの可聴域外で求愛や威嚇に音声を発している可能性がある。本研究は、本種の防除に有効な忌避・誘引音声としての利用を念頭に、ヒトの可聴域外も含めた本種の音声コミュニケーションの有無の検証を目的とした。グリーンアノールが音声を発する可能性のある場面として、求愛、威嚇、被食の3つの場面を想定した。1つの飼育ケースにオス・メス1個体ずつを加えた場合を求愛、単独でオスを飼育しているケースに他のオス1個体を加えた場合を威嚇、ヒトによる圧迫およびウズラによる捕食を被食の状況とした。防音室内でこれらの状況をそれぞれ録画し、同時に超音波域(~100kHz)も収音可能な機器で録音した。コントロールとして、飼育ケースと録画・録音機材のみの状況を録音した。録画した映像において、本種がヘッドボビング、プッシュアップ、デュラップの開閉、および口の開閉を行なっている場面の音声データを抽出した。抽出した音声は、波形およびスペクトログラムの確認と、離散フーリエ変換を行い、コントロールのものと比較した。コントロールの音声と、求愛、威嚇、被食場面における音声には、いずれも明らかな相違は認められず、超音波域においてもグリーンアノールによる発声は確認されなかった。このことから、本種の発達した聴覚は、種内の音声コミュニケーションではなく、環境音を聞くために利用されている可能性が高いと考えられた。音声を利用した忌避・誘引には、本種の出す音声ではなく、捕食者の鳴き声などの環境音の利用が有効であると考えられる。


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