| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-215 (Poster presentation)
日本の都市生態系において、移入種であるアライグマとハクビシンは、在来のタヌキとの競合が懸念されている。タヌキにとって重要な情報交換の場である溜めフン場を、他の2種も訪れていることが確認されているが、溜めフン場での行動や利用の季節変動は解明されていない。そのため本研究では溜めフン場の利用に着目し、3種の種間関係の一端を明らかにすることを目的とした。
調査地は、多摩丘陵の北部に位置する川崎市の明治大学生田キャンパスとした。この地域では、2014年頃からアライグマの定着が確認されている。研究方法としては、自動撮影装置によるカメラトラップ法を用い、キャンパス内の広葉樹林内と竹林内の2カ所のタヌキの溜めフン場での行動調査を通年で行った。
結果として、ハクビシンによるタヌキのフンの匂いかぎ行動が、2カ所の溜めフン場で合わせて12回確認された。この行動は4,5月と10,11月に集中してあり、他の時期には見られなかった。また、秋にアライグマによる広葉樹林内の溜めフン場での排フン行動が2回あり、利用頻度もこの時期に増加した。アライグマによる排フン行動の後、タヌキの利用の減少が確認された。その後アライグマによる匂いかぎ行動が2カ所の溜めフン場で合わせて3回撮影された。
考察として、3種は餌資源が重複していることから、ハクビシンとアライグマは季節ごとに利用できる餌等の情報を、匂いかぎによってタヌキのフンから得ている可能性がある。ただ、アライグマは排フン行動も行っており、通常は自身の溜めフン場で行っている情報交換を、タヌキの溜めフン場を利用して行う可能性が示された。アライグマによるタヌキの溜めフン場での排フン行動は、タヌキにとってペア形成に重要な秋の時期に確認され、タヌキの繁殖への負の影響が危惧される。本研究によって、溜めフン場の利用のような社会的行動にも着目して3種の種間関係を考えていく重要性が示された。