| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-218  (Poster presentation)

生態系被害防止外来種リストに対応した導入済み外来植物のリスク評価システムの開発
Developing a post-border weed risk assessment system compatible with the governmental invasive species list in Japan

*江川知花(農研機構 農環研), 松橋彩衣子(農研機構 中央農研)
*Chika EGAWA(NIAES NARO), Saeko MATSUHASHI(CARC NARO)

2015年に公表された「生態系被害防止外来種リスト(以下リスト)」には、国内に定着済みの外来植物の中から、侵略性および被害の深刻度からみて対策の必要性が高いと専門家に判断された種が「緊急対策外来種」または「重点対策外来種」(高リスクカテゴリー)、侵略性はあるが被害の深刻度の基準には合致しないとされた種が「その他の総合対策外来種」(低リスクカテゴリー)として掲載されている。本リストは、相対的にみてリスクが高く優先して管理すべき種を把握するための重要な資料である一方、公表からすでに6年が経過しており、その間に定着した種や問題化した種はカバーしていない。次々と定着する侵略的外来種の相対的な対策必要度を適宜迅速に把握するには、リスト作成時になされた専門家判断と同等の評価をより簡便に実現するシステムが必要である。豪ビクトリア州では、定着済み外来植物の侵略性と被害の深刻度をスコア化する雑草リスク評価システム(VWRA)が実用化されている。VWRAは41個の問いに4択で答え、答えに応じてスコアがつくもので、明解で迅速な評価が行える。本研究では、VWRAを基に、専門家判断と同等の尺度で高リスク種を特定するシステムを構築できるかを検討した。リストからランダムに抽出した40種の外来植物についてVWRAによりスコアを算出し、ROC解析を行った結果、基準点を21.2とすると高リスク種である緊急対策外来種・重点対策外来種の70%、低リスク種であるその他の総合対策外来種の85%を正しく判別できることがわかった。次に、VWRAの41問からリストのリスクカテゴリーと相関の高い10問を抽出して再解析した結果、AUCは0.94となり、基準点を4.75とすると高リスク種の90%、低リスク種の85%が正しく判別された。対象種を増やし検討を継続する必要があるものの、以上の結果から、VWRAを改良して用いることで、専門家判断を高精度で再現し、対策が必要な高リスク種を迅速に特定しうることが示唆された。


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