| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-225  (Poster presentation)

北海道におけるセイヨウタンポポの遺伝子型および表現型の多様性
Genotypic and phenotypic diversity of Taraxacum officinale in Hokkaido

*松山周平(酪農学園大学), 松本珠季(酪農学園大学), 松永高広(酪農学園大学), 齋藤優衣(酪農学園大学), 伊東明(大阪市立大学)
*Shuhei MATSUYAMA(Rakuno Gakuen Univ.), Tamaki MATSUMOTO(Rakuno Gakuen Univ.), Takahiro MATSUNAGA(Rakuno Gakuen Univ.), Yui SAITO(Rakuno Gakuen Univ.), Akira ITOH(Osaka City Univ.)

 セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)(以下、セイヨウ)はヨーロッパ原産の外来種で日本全国に分布している。日本に生育するセイヨウは3倍体であり無融合生殖によってクローン繁殖することが知られているが、SSR遺伝子型を調べたところ、セイヨウは遺伝的に多様であることが分かってきた。このことは、日本に侵入したセイヨウが遺伝的に多様であったことが本種の分布拡大の成功につながったことを示唆しているが、SSR遺伝子型多型が表現型の違いと関係があるとは限らない。そこで本研究では、セイヨウのSSR遺伝子型と表現型の関係を明らかにするため、北海道各地で採取したセイヨウのSSR遺伝子型を調べるとともに、これらの種子を異なる光条件(遮光なし、遮光)で栽培し、光条件に対する葉サイズ(個葉面積、個葉重、SLA)と地上部・地下部バイオマスの違いがSSR遺伝子型によって異なるのかどうかを調べた。
 北海道各地で採取したセイヨウは複数のSSR遺伝子型に分けられ、いくつかのSSR遺伝子型は複数の採取地から検出された。これらは特定のSSR遺伝子型が分布拡大に成功していることを示している。栽培実験では、SLA、地上部バイオマス、地下部バイオマスにおいて、遺伝子型と遮光処理の交互作用は統計的に有意であり、SSR遺伝子型の違いは光条件への応答の違いと関連があることを示した。これらは、北海道に生育するセイヨウには異なる表現型を持つ複数の遺伝子型があることを示しており、セイヨウの分布拡大には高いクローン生産力だけではなく、日本に侵入したセイヨウ集団の遺伝的多型も関わっていることを示唆している。


日本生態学会