| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-227  (Poster presentation)

外来昆虫クビアカツヤカミキリは日本に複数回侵入した 【B】
Multiple introductions of exotic longicorn beetle, Aromia bungii, into Japan 【B】

*田村繁明, 加賀谷悦子(森林総合研究所)
*Shigeaki TAMURA, Etsuko SHODA-KAGAYA(FFPRI)

クビアカツヤカミキリは、2012年に初めて国内での定着が確認された外来昆虫である。その幼虫はサクラやモモなどのバラ科樹木を加害し枯死させるため、侵入地において問題となっている。現在の分布は、関東北部、東京都西部、埼玉県南部、東海南部、関西西部、徳島北部の互いに離れた6つの地域に限られている。これらの地域へ本種が別々に侵入、定着したのか、ある地域に定着後に他地域へと人為的に移動、定着したのかを明らかにすることは、今後の分布拡大を予測する上で重要な情報となる。本研究では、6つの地域からクビアカツヤカミキリを採集し、ミトコンドリア遺伝子のCOI領域の塩基配列を比較することで、現在の分布が複数回の侵入、定着によって、あるいは人為移動によって形成されたのかを推測した。国内では、7つのハプロタイプが確認された。4つの地域では独自のハプロタイプのみが、2つの地域間では同一のハプロタイプが確認された。これらの結果から、クビアカツヤカミキリは国内に複数回定着がおこった可能性が高いが、一部で人為移動が起こった可能性も否定できない。今後、原産地の個体も含め、SSRマーカーや次世代シーケンサーを用いたより詳細な解析が必要である。


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