| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-230 (Poster presentation)
大阪府を流れる淀川で、特定外来生物チャネルキャットフィッシュIctalurus punctatusの捕獲事例が増加している。本種の淀川における分布や生態を把握するため、延縄による捕獲調査を毎月の定点調査として2020年4月から2021年2月にかけて高槻市地先の1地点で、広域調査として2020年9月に三川合流(桂川、宇治川、木津川)から淀川大堰にかけて定点調査地点を含む7地点で実施した。また、ワンド域で実施した地引網による魚類調査で捕獲された個体についても記録した。
定点調査は5月から10月の間で23個体(広域調査との重複分を含む)が捕獲され、針あたりの捕獲量は8月が最も高値であった。また、広域調査では6地点で21個体が捕獲され、淀川本流の淡水域のほぼ全域での生息が明らかとなった。今年度の調査では合計で41個体捕獲され、そのうち体長が400 mm未満の個体が66%と小型の個体が多くを占めた。胃内容物中の生物は、甲殻類が17%、陸生昆虫が17%、貝類が15%、および魚類が15%の個体で見られ、他に水生昆虫や植物などが含まれていたことから、幅広い食性であることが示された。生殖腺から雌と判定できた5月と7月から9月に捕獲された個体の生殖腺重量指数は、9月を除く月で5を超える個体がおり、9月の個体は全て1未満であったことから、淀川における繁殖期は5月から8月であることが示唆された。また、定点調査地点の下流に位置するワンドでは、10月半ばに実施した地引網調査において、当歳魚とみられる体長100mm未満の3個体を捕獲した。本種は既に淀川の本流の広い範囲に分布し、幅広い生物を摂餌していること、また、繁殖し、当歳魚がワンドに侵入していることから、淀川の生態系への影響が懸念される。