| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-232  (Poster presentation)

群馬県の保護メダカと野生メダカの遺伝子型解析
Genotype analysis of wild and preserved populations of Medaka in Gunma prefecture

*佐藤綾, 坂口杏, 淡路雅史(群馬大学)
*Aya SATO, Anzu SAKAGUCHI, Masahumi AWAJI(Gunma university)

 メダカ(Oryzias sp.)は日本国内に生息する淡水魚で、遺伝的に異なる地域集団に分けられる。近年、地域系統を無視した放流により、遺伝的攪乱が起きていることが報告されている。群馬県内では、約15年前に保護され、以降、継代飼育されている個体が地域メダカとして保存されている。本研究では、それら保護メダカと現在野外に生息している野生メダカの遺伝子解析を行い、この10年で遺伝子型の構成に変化が見られるか明らかにすることとした。系統維持されているA地域の保護メダカ12個体と同地点に現在生息しているメダカ14個体を入手した。得られたメダカの全DNAを用いて、ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域(mtDNA cytb)をPCR法により増幅し、産物を5種類の制限酵素を用いて切断した。得られた断片長のパターンを過去に報告されている遺伝子型の断片長パターンと照合し、各個体のmtDNA cytbの遺伝子型(マイトタイプ)を決定した。また、ヒメダカの体色原因遺伝子(b遺伝子)マーカーを用いて、対象個体がヒメダカの体色遺伝子を保持しているか解析した。保護メダカからは東瀬戸内型に属し関東でも確認されているマイトタイプB1aが75%、北九州型に属し関東でも確認されているB15が17%、東日本に幅広く分布しているB11が8%検出された。b遺伝子を持っている個体はいなかった。一方で、野生メダカから検出されたマイトタイプはB1a(93%)とB15(7%)であった。また、2個体(14%)がb遺伝子を保持していた。保護メダカは個体群の一部だけが採取され継代飼育されている個体であること、野生メダカは今回解析した個体数が全体のうちどれくらいか不明であることから、単純な比較はできない。しかしながら、今回の結果から、数十年前に捕獲された時には含まれていたマイトタイプB11が現在の野生メダカから検出されなかったこと、保護メダカでは見られないヒメダカの体色原因遺伝子を持つ個体が野生メダカには含まれることが明らかとなった。


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