| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-235 (Poster presentation)
【はじめに】土壌化学特性は植物種の分布に大きな影響を与えており、野外では強酸性・貧栄養的な土壌環境に在来植物が、弱酸性・富栄養的な土壌環境に外来植物が分布しやすい事例が多数報告されている。しかし、この現象は植物の環境適性を直接反映したものなのか、植物種間競争の結果なのか、明らかになっていない。そこで本研究では、外来植物としてセイタカアワダチソウを、在来植物としてキキョウとカワラケツメイを選び、栽培実験によってこれら植物種の生育に好適な土壌環境を明らかにすることを目的とした。
【材料と方法】強酸性・貧栄養である非アロフェン質黒ボク土表層土壌(宮城県大崎市)に適宜肥料成分と石灰を施用し、セイタカアワダチソウ(福岡市産)、キキョウ(真庭市産)、カワラケツメイ(真庭市産)の催芽種子を播種し、25℃,明/暗を12h/12hの条件下、インキュベータ内で6週間栽培し、生育量を測定した。
【結果と考察】いずれの植物種も、強酸性・貧栄養な無施用土壌で最も生育量が小さく、リン酸および石灰を施用した弱酸性(土壌pH(H2O) > 5.5)かつ高可給態リン酸(Bray II P > 200 mg P2O5 kg-1)の土壌で最も生育が旺盛であった。しかし、強酸性・貧栄養条件で最も生育量が減少するのはセイタカアワダチソウであり、リン酸あるいは石灰を施用しない土壌での生育量は、最大生育量との比で1~9%であった。これに対してキキョウとカワラケツメイでは、リン酸あるいは石灰を施用しない土壌での生育量は、最大生育量との比でそれぞれ27~52%および15~31%であり、強酸性・貧栄養的な土壌環境に対する適性はセイタカアワダチソウより高いと考えられた。以上の結果から、キキョウやカワラケツメイが強酸性・貧栄養的な土壌環境に出現するのは、このような環境では他の植物との競争において優位に生育できるためであり、このような土壌環境を好んでいるわけではないと考えられた。