| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-240 (Poster presentation)
本研究は、浜松市浜北区にある静岡県立森林公園内に生息するフクロウを対象として行った。ICレコーダーを用いた音声録音調査は、フクロウが営巣・繁殖・抱卵・給餌・育雛をする期間である5月と6月に、週1回の間隔で9回、合計89地点で実施した。フクロウの営巣場所は、雛の鳴き声が盛んに聞こえた6月2日から3日に、録音データをもとに、4録音地点から営巣場所までの相対距離を算出することで求めた。録音後、音声解析ソフトFFTAnalyzerを用いて、成鳥の鳴き声の音圧レベルから相対距離を算出した。4地点からの相対距離をもとに地図上で円を描き、円弧の重なる地点でフクロウの巣を探索した。本研究により、夜行性鳥類であるフクロウの生態調査において、ICレコーダーを用いた音声録音調査が有効であることが示された。はじめに、県立森林公園内においてフクロウの生息が確認できた。次に、音声データ解析により、調査地内での詳細な活動場所だけでなく、日没直後や早朝の時間帯にかけて活発に活動していたことが明らかになった。また、日没直後に時間帯に絞って録音することで、フクロウの鳴き声の音声解析の時間や労力を省力化できる可能性が示された。さらに、フクロウの音声やWavePadの波形を比較することで、フクロウの雌雄の成鳥、雛も生息していたことが分かった。3つめに、ICレコーダーによって録音された音圧をもとに相対距離を算出することで、音源である営巣場所を特定できる可能が示された。検証実験より、ICレコーダーを用いた音源特定法は、5m程度の誤差でおおむね妥当であった。これら3点を明らかにすることで、夜行性鳥類フクロウのICレコーダーを用いた効率的な調査手法が構築され、調査者の労力を抑えたうえで夜行性鳥類の生息状況を正確に把握できるようになった。本研究によりICレコーダーを用いた音声録音調査手法は、熟練の調査員でなくても希少な夜行性鳥類の保護や保全に向けた活動へ貢献する道を拓く可能性があることが示された。