| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-241 (Poster presentation)
日本におけるコウノトリの再導入は2005年に開始され,当初豊岡盆地とその周辺に限定されていた繁殖地が2019年には7府県に拡大した.それに伴い,主に目視で行われてきた高頻度の繁殖モニタリングが人的労力や観察体制の面で難しくなりつつある.そのためビデオ映像や写真の自動撮影により繁殖状況を監視する手法の確立が必要である.また,これまで野外で巣立ちした個体には足環を装着しているが,個体が巣に伏す時間により産卵日とヒナの日齢を推定して足環の適切な装着日を決定しているので,そのためにも繁殖行動のモニタリングが引き続き必要である.そこで,写真およびビデオ映像を活用した3種類の繁殖モニタリング手法を実行し特徴を比較した.
1つ目の方法は,商用電源を備えた建物内にビデオカメラあるいはウェブカメラを設置し映像データを毎日回収あるいはインターネット経由でダウンロードするもので2018年および翌年に島根県の繁殖地で実施された.2つ目の方法は,単眼望遠レンズ,ウェブカメラ,モバイルWi-Fiルータ,バッテリ等で構成される機材一式を木箱に入れて現地に設置し,インターネット経由で映像を閲覧,ダウンロードするもので,2020年に兵庫県と徳島県の2か所で試験的に運用した.3つ目の方法は,単3電池で駆動するトレイルカメラを現地に設置し,静止画を1分間隔でインターバル撮影して撮影データを定期的に回収するもので,2019年に兵庫県の5か所で試験的に運用した.その結果,1つ目の方法は精細な映像が得られ行動解析にも有用だが,機材の設置環境に制約があり運用費が大きいこと,3つ目の方法は安価で簡便で伏抱率の推移から産卵を推定することが可能だが,個体識別は困難であること,2つ目の方法はその中間的な特徴を持つことが確認された.これらの特徴を踏まえて3種類の繁殖モニタリング手法の使い分けについて考察する.