| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-249  (Poster presentation)

気候変動によるエゾナキウサギの分布変化の予測:微気候と生息地間の連結性を考慮して 【B】
Predicting distributional shift of the Japanese pika due to climate change with consideration on microclimate and habitat connectivity 【B】

*崎山智樹(北大院・環境), Jorge GARCíA MOLINOS(ARC Hokkaido Univ.)
*Tomoki SAKIYAMA(Hokkaido Univ.), Jorge GARCíA MOLINOS(ARC Hokkaido Univ.)

気候変動下における生物の分布変化を予測するために、生物分布と環境の関係性を解析する種分布モデル(Species distribution model: SDM)が使われてきた。また近年、各地域における気候変動への曝露の評価指標として、現在から将来までに気候が移動する速度を示したCCV(Climate change velocity)が用いられている。この手法では、現在と将来の気候を同一とみなす閾値や現在から将来までに気候が移動する空間距離の上限を解析者が設定するため、生物の温度耐性や移動分散能力と対比することで気候変動の影響評価が可能となる。本研究では、これらの手法を用いて北海道に生息する寒冷適応種エゾナキウサギ(Ochotona hyperborea)の脆弱性を評価した。SDM解析では、maxlikeアルゴリズムを用いて分布地点(n=302)と気候、地形、地質の関係性を把握してから、将来的な生息適地の変化を予測した。CCV解析では夏季平均気温に着目し、同一気候の条件を複数設定し(閾値1,3,5℃、空間距離1,3,5,10km)、気候の移動速度を算出した。将来気候シナリオはRCP2.6,RCP8.5を用いた。SDM解析の結果、降水量、積雪、夏季平均気温などの気候要因が本種の分布に強く影響していることが明らかになり、現在の生息適地は高標高域と予測された。将来気候を適用した結果、両シナリオ下において生息適地の減少が予測された。CCV解析の結果、同条件下では平野部や山頂部よりも、山腹部の方が気候の移動先をより多く発見する傾向が確認された。全条件下における気候の移動速度の総平均は0~0.12km/年と試算された。本研究の結果は、気候変動下におけるエゾナキウサギの分布縮小の懸念を示唆する。将来的な生息適地のみならず、そこに至るまでの本種の移動経路が、保全重要箇所であると推察される。


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