| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-252 (Poster presentation)
海洋生物によるマイクロプラスチックの誤食は、生体に悪影響を及ぼす可能性があるため、世界的にも問題視されている。誤食の実態は世界で報告されつつあるが、日本周辺海域の魚類における MP の誤食についての知見は乏しい。生息環境や魚種間での誤食率の相違が明らかになれば、誤食メカニズムやモニタリング魚種の選定、さらには対応策に資する有益な情報となる。そこで、東シナ海において浅海域(水深20m)と沖合域(水深120m)で漁獲された魚類を対象に誤食実態を明らかにした。供試魚は、浅海域では2018年に長崎大学附属練習船・鶴洋丸にて釣獲されたマサバ(n=64)とマアジ(n=40)を用いた。一方、沖合域では2019年に長崎丸で実施されたトロール操業により漁獲されたキダイ(n=20)、サギフエ(n=39)、マトウダイ(n=59)、カナガシラ(n=44)、マアジ(n=46)、カイワリ(n=73)を用いた。供試魚は、体長、体重を計測した後、解剖して消化管を取り出された。その後、実態顕微鏡下で MPs と思われる物体を取り出し、色、形状、長径を記録し、 FT−IR に供してプラスチックの種類を判定した。誤食していた個体割合は、沿岸域の方が沖合域より高く、約50%であった(t-test, p=0.007)。沖合域の魚種では、マトウダイが最も高く 16.9 %で、次いでカイワリ13.7 %、マアジ 8.7 %、サギフエ 7.7 %、キダイ 5 %、そしてカナガシラは誤食していなかった。また、 誤食していた マイクロプラスチックのサイズは、魚種間で差がなかった( Kruskal-Wallis test、 p=0.247 )。以上から、沿岸に生息する魚類の方が、誤食割合は高いものの、沖合域の水深100mを超える底生魚でもマイクロプラスチックが消化管内に存在しており、マイクロプラスチックは我々が想像している以上に海洋生態系へ入り込んでいるのかもしれない。