| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-255  (Poster presentation)

環境調査への環境DNA分析活用の試み
Trials of environmental DNA analysis in environmental investigation

*大井和之(九州環境管理協会)
*Kazuyuki OOI(KEEA)

地域の生態系保全を目的とした環境調査では、対象となる地域の生物の生息地や絶滅危惧種、外来種などの情報を効率的に収集することが求められる。生息分布情報の確度を上げるためには、対象生物の不在情報を含めて多地点の情報が必要である。また、絶滅危惧種の動静や外来種の侵入の有無を確認するためには、定期的な調査を継続的に実施していく必要がある。
環境DNA分析は、河川水などの環境水中のマクロな生物のDNAを検出するもので、汎用プライマーと超並列シークエンサー(NGS)を用いて対象生物群の生物相を網羅的に解析するメタバーコーディングと、特定の対象種に特異的なプライマーとリアルタイムPCR (qPCR)を用いて対象種由来のDNAの存在を定量的に解析する種特異的解析という方法がある。
本調査では、地域の陸水生態系を対象とした環境調査での環境DNA分析の有効性を検証するために、福岡県豊前海、筑前海流入河川で採水したサンプルについてMiFishによるメタバーコーディングと、福岡県で定着の恐れがある外来種であるヌートリア、カミツキガメ、スポッテッドガーを対象とした種特異的解析を行った。メタバーコーディングでは各地点から12~27種の魚類が確認され、全75種のうち11種が外来種であった。種特異的解析では今回分析したサンプルからは外来種3種は検出されなかった。
環境DNA分析は、現地作業は1Lの水を採水するだけなので、これまでの生物調査に比べて労力が小さく、DNA配列による同定は形態同定の専門的な知識を問われることもない。今回の分析でも、タイリクバラタナゴや中国産ドジョウなど在来種と類似した外来種の生息が容易に確認できた。環境DNA分析は地域の広い範囲をカバーした自然環境調査に有効な調査方法であると考えられる。


日本生態学会