| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-258  (Poster presentation)

日本沿岸海域における航空機を用いた海鳥の広域分布調査
Seabird distribution of coastal area around Japan by aerial census.

*小村健人(いであ株式会社), 萩原陽二郎(いであ株式会社), 堀江源(いであ株式会社), 横山陽子(いであ株式会社), 髙野澤均(いであ株式会社), 田悟和巳(いであ株式会社), 樋口広芳(慶應義塾大学)
*Taketo KOMURA(IDEA Consultants, Inc), Yojiro HAGIWARA(IDEA Consultants, Inc), Gen HORIE(IDEA Consultants, Inc), Yoko YOKOYAMA(IDEA Consultants, Inc), Hitoshi TAKANOZAWA(IDEA Consultants, Inc), Kazumi TAGO(IDEA Consultants, Inc), Hiroyoshi HIGUCHI(Keio Univ.)

地球温暖化対策のため洋上風力発電等の再生可能エネルギーの導入が推進されている。洋上風力発電施設の建設にあたっては、バードストライクなどの海鳥への影響が懸念されている。海鳥に配慮した風力発電施設の立地検討を行うためには、日本の沿岸域における海鳥の分布情報が必要である。GPS等を用いて海鳥の採食場所や高利用域の推定が多くのバイオロギング研究で行われている。しかし、これらの事例は海鳥の繁殖地を中心とした行動から推定したものであり、非繁殖域や非繁殖期の情報が不足している。そのため、日本で繁殖しない種の分布に関する情報はほとんどない。海鳥の海上分布を調べた事例は船舶を用いた洋上センサス調査が中心である。本手法では、日本の沿岸域を短期間で調査することが困難であるため、洋上センサス調査に基づいた分布情報は断片的なものにとどまっている。本研究では、小型航空機(セスナT206H型及び172R型など定員4~6名の高翼式飛行機)を使用し、飛行制限区域やオホーツク海および瀬戸内海を除く日本の沿岸海域を対象とした航空センサス調査を実施した。調査は2018年12月~2019年12月に春季、秋季及び冬季の計3季実施した。調査測線は、海岸線に沿って岸から1km及び3km沖合に設定した。
調査の結果、全期間において7目11科49種、累計257,444個体の鳥類を記録した。日本周辺海域で海鳥の個体数が多く分布している海域は、北海道十勝沖、茨城県~千葉県沖などであった。一方で、全期間を通して個体数密度が低い海域は紀伊半島~四国沖の海域であった。本研究は日本周辺の沿岸域を統一手法で網羅的に調査した国内初の事例であり、今後の洋上風力発電施設の環境影響評価やマリーンIBAの選定に有用な情報である。


日本生態学会