| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-262 (Poster presentation)
2030年までに世界の飢餓に終止符を打つことは、国際社会における重要な課題の1つである(持続可能な開発目標2)。これまで、世界の農業生産量は拡大してきた一方、いまだに6.9億人が飢餓状態にあり、1.4億人の子供が発育阻害 (Stunting) に直面している。さらに、今後の気候変動に伴い干ばつ頻度の増加が懸念されており、飢餓や栄養不足のリスクが増大する可能性がある。干ばつに対する生態系の応答は、気候変動下での安定的な食料供給を実現する上で重要な要因となる。そこで本研究では、干ばつに対する生態系の抵抗性に着目し、干ばつに伴う子供の栄養不足のリスクが高い地域を全球スケールで明らかにする。1982-2015年のSPEI (Standardized Precipitation Evapotranspiration Index) を用いて、干ばつの程度を3段階に分け、各段階の干ばつ対する生態系の抵抗性を植生指標であるNDVI (Normalized Difference Vegetation Index)の変化を用いて評価した。また、子供の栄養状態の指標として、発育阻害に着目し、2000-2015年の干ばつの各段階における発生率を地図上に示した。その結果、とくに南アジアと東アフリカでは、干ばつに対する生態系の抵抗性が低い上に、子供の発育阻害の発生率が非常に高いことが明らかになった。この傾向は、干ばつの3段階すべてで観察された。これらの地域では、干ばつに対する生態系の抵抗性がすでに低いため、気候変動下の食料供給が不安的になる可能性があり、とくに干ばつ時は食料の輸入や再配分など社会経済的な対応が、子供の栄養不足を解消する上で必要となるだろう。