| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-263  (Poster presentation)

集落型生態系サービス支払制度による農地維持効果:集落・世帯要因のマルチレベル分析
Community-based payment for ecosystem services to countering land abandonment: Multilevel analysis of community and farmer level factors

*庄山紀久子(防災科研), 西麻衣子(国連大学), 橋本禅(東京大学), 齊藤修(地球環境戦略研究機関)
*Kikuko SHOYAMA(NIED), Maiko NISHI(UNU-IAS), Shizuka HASHIMOTO(The Univ. of Tokyo), Osamu SAITO(IGES)

国内の生態系サービス支払制度(Payment for Ecosystem Services, PES)の事例として参照される中山間地域等直接支払制度は、農地の多面的機能の維持を目的として導入され20年が経過したが、現行の支払制度はアクションベースの支払制度であることから、その効果が十分に明らかでないことが課題となっている。本研究は石川県能登地域の960農業集落を対象に、集落型生態系サービス支払(Community-based PES, CB-PES)による放棄農地抑制効果の検証を行った。支払制度の対象集落および農地に関する空間データと2005年の農林業センサスの調査票情報を用いて、放棄農地発生要因に関する集落および農家世帯要因のマルチレベル分析を行った。分析の結果、CB-PESは集落における共同管理活動を促進し、放棄農地の発生を抑制していた。しかし、放棄農地の発生要因には複数の社会的・環境的要因が影響しており、さらに農家の後継者の有無、生産規模、農外所得などの農家レベルの要因と集落の地理的条件、共同管理活動の状況などの集落レベルの要因の両方が影響している。また今後の高齢化・人口減少社会においては、より集落間の連携を強化する集落間連携加算制度の活用が農地管理を含む集落機能の維持に必要であることが示唆された。


日本生態学会