| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-269 (Poster presentation)
環境教育や自然史研究の場面において、博物館等の所蔵する標本が重要な役割を果たすことは少なくない。ところが近年、特に鳥類や哺乳類標本については、鳥獣保護管理法による捕獲の制限に加え、博物館に配当される予算の減少や剥製業者の廃業など、良質な標本の収集機会の減少が問題になっている。博物館や環境教育施設などにおいて鳥類標本を入手する主な手段は、ロードキルや衝突によって死亡した個体の拾得である。鳥類は遺体拾得の機会が限られるため、博物館等で入手できた場合には冷凍庫において一時保管することが多い。保管期間は標本化するまでの間となるが、長期の冷凍保管は遺体のコンディションを悪化させるため、この期間は短いほうがよい。現状では、冷凍鳥類遺体は各機関内で管理および活用されている。ところが、量的な課題や担当者による個体選別の結果として早期の標本化がかなわないことがあり、この状況は不要な長期保存によるコンディションの悪化を不本意ながら招いている。
現状では冷凍鳥類遺体等の未登録標本の保有状況を館外に公開していることは稀だが、仮に標本化の優先度が異なる利用者が本情報にアクセス可能になると、活用チャネルの増加が見込まれる。そこで本研究では、各機関が保有する冷凍鳥類遺体の可視化を目的として、冷凍鳥類遺体の調査および担当者への聞き取り調査を行った。対象は道央地域の博物館および野生動物保護施設および各機関で冷凍保管されている野生個体とした。調査を実施できた機関は4施設と少ないものの、それぞれ分類群の構成には違いが見られるなどの結果が得られた。本発表では、保有状況についての報告および聞き取り調査の結果について報告を行うとともに今後の展望について検討を行い、博物館同士が協力し、情報交換機能をもたせた収集体制を構築することの端緒としたい。