| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-273 (Poster presentation)
都道府県では特定鳥獣保護管理計画に基づいてシカやイノシシの個体群管理を行う際、密度指標や捕獲情報の経年的なモニタリング調査を実施し、個体数の推定結果に基づいて、捕獲強化などの意思決定を行っている。近年、捕獲情報の少ない都市周辺部への分布拡大や県境をまたぐ地域における感染症(CSF)への対応など、データ蓄積が十分でない状況において、迅速な対応を求められる場合がある。また、複数種が管理対象になっている場合、すべての種について個別のモニタリング調査を行うことは、労力的にも限界があるため、効率的に生息状況についてのデータ収集を行う必要性がある。
そこで、本研究ではシカ・イノシシを対象に、単年度で収集可能なデータから2種の空間的な密度分布を推定することを目的とした。2018年度に、事業年度内に推定に必要なデータ収集が可能となる、自動撮影カメラ調査と痕跡調査を、兵庫県で実施した。自動撮影カメラ調査は、県内11箇所において、1地点につき15台のカメラを約2ヶ月間設置して行った。シカおよびイノシシが撮影された動画から、カメラ前の有効撮影範囲における進入回数と滞在時間を集計し、Random Encounter and Staying Time Model (Nakashima et al. 2018)により、密度推定を行った。痕跡調査では、シカの糞塊密度(約100箇所)とイノシシの掘返し(約70箇所)を記録した。一部の調査地においては、それぞれの痕跡は同時に記録した。痕跡調査から得られる空間的な相対密度分布と、カメラ調査から得られる生息密度情報を統合した階層モデルから、県全域における空間的な密度分布の推定を行った。既存のモニタリング情報による推定値との比較から、本研究の推定手法の有効性を考察する。