| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-278  (Poster presentation)

鳥取砂丘に設置された生物保護柵がコウボウシバの生育に与えた影響
Effects of a no trampling zone on the growth of Carex pumila at Tottori Sand Dunes

道脇加奈, *永松大(鳥取大学)
Kana MICHIWAKI, *Dai NAGAMATSU(Tottori Univ.)

鳥取砂丘は観光可能な日本最大の砂丘として有名で,訪れる観光客が多く,2019年の入込客のべ人数は約110万人にのぼっている。このような多くの人の出入りは,砂丘の生態系に影響を与えていることが考えられる。海岸で植生が踏みつけられることにより枯死に至っていることや遊歩道の整備によって枯死が減った事例はいくつか報告がされている。天然記念物の鳥取砂丘ではこれまで雑草の増加が問題視され,30年近く組織的な除草作業が行われてきた。しかし,人の出入りが多く立ち入り規制ができないことから,人の踏みつけによる植物への影響は定量的には評価されてこなかった。このような状況下,鳥取砂丘内では昆虫の希少化が問題となり,エリザハンミョウの生息地保護柵が設けられた。立ち入り規制の柵が鳥取砂丘内に設けられるのは初めてで,本研究ではこの機会を利用し,砂丘地の踏みつけの有無による植物への影響を明らかにすることを目的とした。
2019年夏に柵周辺の10地点,柵内外合計20の調査枠でコウボウシバの草高,葉長,健全度の調査を行い,柵内と柵外のコウボウシバの状態の比較を行った。7月,8月ともに柵外の方が,草高が低くなり,葉長が短くなった。健全度についても柵外の方が枯死した葉や重度の傷を負った葉が多く見られた。葉数は7月と8月に比べて柵内の葉数が増加しており,葉数が増加した8月でのみ柵内と柵外での葉数の差がみられた。踏みつけは植物の生育状態に大きな影響をもたらしているといえる。


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